目を見ればわかるなんて

27歳社会人のブログ。

少年御三家とYou&Jと2010年代のアイドル像と

かつてジャニーズにYOU&Jというファンクラブがあったことを、今の若い子は知らないかもしれません。少年御三家は、もっと知らないかもしれません。

 

この三グループを比較している記事はたぶんこの10年間死ぬほどあると思いますし、私にしても知ってることはほんのわずかなのでそう深い考察は出来ないのですが、自分の意見を整理したくてこの記事を書いています。

 YOU&Jはジャニオタならよく知る通り、NEWS、関ジャニ∞KAT-TUNの三グループの合同ファンクラブでした。かつてJr.黄金期を支えたメンバー、黄金期に憧れて入所したメンバー、それぞれが色んな思いを抱えながらが00年代前半に相次いでデビューしました。人気があった反面、00年代以降では稀に見るほど脱退や不祥事も多かったのもこの三グループです。

 

オタクというのはとかく「物語性」が好きです。とりわけアイドルオタクはその気が強く、メンバーやグループが成長していく中に物語を読み取ることで、共感したり、応援したり、涙したりするわけです。

 

結成からデビューまでの期間が長かったグループも、短いグループもありました。出ていく人と残る人、離れるファンと残るファン。脱退する前の曲、誰が脱退した人のパートを引き継ぐのか。この一連の流れの中に、そのグループを象徴するストーリーが生まれました。その一つ一つにファンは悲しんで、喜んで、失望もしたし、歓喜もしました。それが、後から振り返った時に説得力のある物語として機能しました。

 

事務所の中での立ち位置的にも、学力的な意味でもエリート集団として嘱望され、挫折から這い上がり、四人で返り咲いたNEWS。

決して恵まれた待遇でなかった関西ジュニアからデビューの道を切り開き、SMAP退位後のバラエティアイドル枠に入りつつある関ジャニ∞

ジュニア史上最高と言われるほどの人気を誇り、瞬間最高風速をたたき出したといっても過言ではなかったKAT-TUN

 

意図していなかった部分もありましたが、この三グループは成立から現在に至る道のりの中で固有の物語を作り上げてきました。事務所の思惑とは違った形で強くなってきた部分の強いグループだと思います。

 

思うに、ジャニーズ事務所はこの比較的近い時期にデビューした三グループを売る戦略として、最も栄華を極めていたうちの一つであろう少年御三家のシステムをもう一度作りたかったのだろうと思っています。

少年御三家とは言わずと知れた光GENJI男闘呼組、忍者の三グループで、芸能史上でもトップクラスの人気を博しました。昭和の価値観では男性アイドルは「御三家」なんです。新御三家の一人は郷ひろみ(ジャニーズ出身)ですしね。ジャニーさんのアイドル像って古いんですよね、基本的に。

 

光GENJI枠はもちろんNEWSですね。王子様枠です。ある意味ジャニーズとしては保守派な印象のグループです。

光GENJIはトップテンで何週も続けて一位を取り続けていた伝説のスーパーアイドルです。正直、後世に生きる私たちにとっては赤坂くんがクスリで捕まったり、大沢くんの子供が血がつながってなかったり、諸星くんは感じの悪いおっさん、みたいなイメージでしかないのですが、当時のシングルランキングなんかを見ると芸能史上でも類を見ない程のアイドルだったことがわかります。

 

白を基調とした王子様としての宿命を背負ったジャニーズ的価値観におけるエリートグループですね。光GENJIはキラキラしたアイドル像が通じた最後の世代といっても過言ではないでしょう。そのイメージから脱却したSMAPが新しいジャニーズ像を作り上げるまで、ジャニーズに求められるイメージは、作り上げられた手の届かないアイドルでした。NEWSは王道への回帰路線が感じられ、SMAP以後の王子様グループをどうやって構築していくのか期待が集まったグループでした。

 

過去の先輩にしてもマッチなんかはちょっとやんちゃなイメージだし、シブがき隊なんかはややコミカル路線でしたが、ジャニーズの王道を行くスタイルというのは少年隊を一種の完成形にした、ミュージカルで映えるアイドル像でした。世代を背負う王道系と、二番手三番手で悪めや面白系を入れるのは住み分けの意味でも理にかなっています。

残念なことではありますが、脱退者が出てしまったり、不祥事を起こしてしまったり、のちに年長組と年少組でスタンスが変わって年長組が出て行った部分もNEWSと光GENJIは重なる部分があります。NEWSは高学歴という属性でもありましたが、優等生なイメージで売りたかった所にスキャンダルがあったのも初期のマイナスイメージに拍車をかけました。活動休止後の6人体制となってからは安定しましたが、結果的に山下くんがソロへ移行し、錦戸くんは関ジャニ∞へ専念してしまいました。

 

山下くんを売るためのユニット、というように言われることもありますが、ビッグネームの子息であるtakaこと森内くんのためのユニットと言われることもありました。

が、結果的に前述の事情で今の4人体制に落ち着いています。4人時代が一番長くなったんだなぁ、と思うと時の流れを感じずにはいられないですね。私も年を取るわけです。

 

KAT-TUN男闘呼組の色がありました。男闘呼組は言わずと知れた「ジャニーズの落ちこぼれ」という設定の不良グループです。「落ちこぼれ」というと今の時代ではイメージが悪いだけですが、当時は落ちこぼれ=不良という代名詞として使われていました。管理社会にクソくらえ、と唾を吐く不良がかっこよかった時代だったのです。

同時代では色んな不良をテーマにしたドラマ、映画、漫画、音楽が作られたので男闘呼組もそのカテゴリの中の一つです。詰め込み型教育の蔓延した学歴社会で、ドロップアウトしたはぐれ者の事を落ちこぼれと呼んだのです。

 

まぁKAT-TUNはかなり踊れるグループで、男闘呼組は踊らず(本人たちは踊れないから、と言っていたようですが)バンドをやってる点では異なっていますが、不良というコンセプトは似通っています。両グループが実際に不良だったかどうかは置いといて、メンバーの外見もジャニーズらしからぬ、メンチを切っていくタイプのアイドルでした。性質上、ロック性が強い点も似ていますね。ただ、KAT-TUNがワルそうなメンバーが次々と抜けていった結果としてポップ路線が強くなり、数年後には関ジャニ男闘呼組の路線に近くなっていったのは興味深いです。

 

ギラギラとした悪そうな兄ちゃんたちがツッパって、しかしどこか寂しそうな、埋められない孤独のようなものを浮かび上がらせる時、信じられるのが仲間=グループだけなんだ、という表情を見せるときに、この6人の物語を読み取ることがファンであることなんだ、と私は思いました。

 

6人から5人、4人、3人と一人ずつメンバーが減っていき、とんがったメンバーは大半が辞めてしまった結果としてお茶の間受けする嵐的な雰囲気の仲良しグループになっていったのは皮肉な感じもします。タメ旅がとても面白かったので後半の雰囲気も私は大好きですが。

 

関ジャニ∞は忍者的な、面白枠というかコミカルな立ち位置でデビューしたと思っています。忍者というグループはたぶん少年御三家では最も知名度が低いと思われるのですが、今のA.B.C-Zを彷彿とするような超人的なアクロバットダンスユニットでした。

ここだけ切り取るとイマイチ関ジャニ∞との結びつきは弱いですが、忍者はカウコンなんかでよく歌われる『お祭り忍者』でデビューしていて、実はこれは美空ひばりの『お祭りマンボ』のカバーでした。デビュー当時、「演歌を歌えるアイドル」としてデビューしたのです。この辺はテイチクの演歌レーベルでデビューした関ジャニ∞とデビュー時のイメージとしては似ています。

 

忍者のイメージはフォーメーションダンスしかないかもしれないですが、歌もそこそこ上手かったんですけどね。光GENJIの瞬間的なピークと、少しイレギュラーな男闘呼組の存在に押されてやや影が薄いグループです。ダンスと歌を含めた総合的な実力では他の二グループに比べてかなり高かったんですけどね。いかんせん光GENJIの下り坂の時期と被ってジャニーズの存在感が無くなっていた時期なのも悪かった。

和のコンセプトを持たせたアイドルで、三社祭mixとかリミックスも結構日本の祭にかけてたんですけど、都内最大級のTSUTAYA渋谷ですら全く取り扱っていないマイナーぶりは泣けてきます。

 

人気という面で言えば忍者と比べるまでもない関ジャニですが、明るいパブリックイメージを守る点が特徴といえます。他のグループが暗いという訳ではないのですが、関西出身らしくバラエティ向けのキャラクターで進んでいく感じが見ていて安心感を与えます。昔はすばるくんとかギラギラしてて目つきとかすごい怖かったんですが、最近はバラエティで道化を進んで演じてるような感じもあって丸くなったなぁ、と思います。

 

とまぁ、少年御三家時代の事を思いつつYOU&Jを無理くり特徴づけたりしてるんですが、今から25年位前のジャニオタ達は少年御三家に夢中だったわけです。今に比べて情報が少なく、キラキラしたアイドルを無理して演じるのを見る中でも、隠された物語性を読み取っていたわけです。

 

昨今、特に後発の女性グループに多いですが、必要以上にわかりやすい物語性を表に出そうとするアイドルがうじゃうじゃいます。

私はことアイドルに関して物語性というのは一緒に追ってきた歴史の中で後から振り返って読み取るものだと考えていますが、今はそこまで歴史が出来上がる過程を待てない人も多いような気がします。既に作られた歴史ありきでアイドルを愛好している感が否めない。

 

大量にいるアイドルの中で自分が目を付けた地下中の地下みたいなアイドルが売れていくという保証はどこにもないし、最終的にサクセスストーリーとして読み取れない物語を後年になって評価することの難しさはアイドルを追ってきた人なら誰しもがわかるのではないでしょうか。

先代の東京パフォーマンスドールなんかはアイドルとしての在り方がおニャン子とAKBの文脈の中間に位置していると思いますが、語られる事はほぼありません。篠原涼子仲間由紀恵がTPD時代の話をすることも、まぁありません。中谷美紀SMAPTOKIOの番組でアイドルやっててムーンライト伝説歌ってた事なんか今の若い子は知らないですよ。そりゃそうだ。みんなアイドル冬の時代にアイドルとしては売れなくて、女優や歌手としてやっていく道を選んだんですから。捨てたい過去でしょうよ。

 

だから、今の世の中ではそこそこ売れてきた所で物語をあらすじで読む、そんな感じのアイドル像が求められているのかもしれません。アニメにしたって漫画にしたって、今のサブカル業界はネットの発達により供給過多の時代が進みすぎてすべてをチェックすることなんて不可能です。

 

そしてネットの発達によってアイドルを名乗ることはとてつもなく容易になりました。ニコニコ動画で「歌ってみた」文化が発達してなんちゃって歌手が世に氾濫しましたが、ライブチャットをしてればアイドルの真似事ができる世の中です。そんな一億総アイドル社会といっても過言でない承認欲求に飢えた世の中で、受け手側も手っ取り早い物語を欲しているように思います。

 

つまり、有象無象の素人を含めて、アイドル側は「物語を背負ったアイドル」でありたいし、ファン側は「物語の構成要素」でありたい。

ファン目線で言うと、小さなハコからスタートしたアイドルの成長物語の一部になって、自分とアイドルを同一世界観の登場人物として見てもらうことで承認欲求が満たされるわけですね。それこそネットアイドルみたいな文化でさえ、再生回数二ケタ台から付いてる信者はデカイ顔できるわけですから。古参がえばってるのはどこの業界でも一緒です。

 

だからこそある程度売れてきた時点で、「あっこの人たちにはこんな物語があるんだ!」みたいな後乗りしようとする人間に、古参は厳しいものです。自分たちが売れない時期を下支えして売れさせた、この物語は自分たちのものだ、という自負がそうさせるのでしょう。ポッと出の新キャラが3クール目から出てきたら叩くって話ですよ。だからこそ、武道館とかアリーナでやるちょっと前、そうですね、3000人くらいのハコでやってる所でファンになっておくのがベターですよね。ややこしい初期ファンではないけど、そこそこ古い、みたいな。

 

ちょっと違う話になりますが、90年代後半にモーニング娘。が、00年代後半にAKB48が流行って以後、「落ちこぼれ集団と呼ばれた子たちが、メンバーの脱退や苦難があっても、泥臭い努力で成功を勝ち取る」というフェイクドキュメンタリー形式のアイドルが、最も成功したひな形として定着しました。努力している姿を積極的に見せに行くスタイルですね。といってもモー娘。ASAYANのオーディションで平家みちよに敗れて、シャ乱Q内ゲバとモキュメンタリーの合わせ技で大成功を収めたことも、すでに歴史の一部と化している気がしますが。

 

肝心なのは、「落ちこぼれ」が「努力をして」「熱心なファンの支えで」「成功した」という設定にあります。実際にどうなのか、という点は検証不可能です。ファンはアイドルがライブのMCとかSNSで発信する情報を妄信するしかないのです。ガチなファンほど驚くほど冗談が通じないのでくれぐれも注意が必要です。

 

だから、ここ二十年くらいのアイドル像はその少し前の世代で言えば素人の部活感覚を楽しむおニャン子や、ファンタジーのスターであった聖子・明菜の時代、素人が見初められてシンデレラになるスタ誕の時代とは少し毛色が違います。

 

アイドル業界の潮流が10年遅れくらいでアニメ業界に入ってくるのは歴史が証明していますが、モーニング娘。の文脈でアイマスが、AKBの文脈でラブライブが人気を博しているのも、同一時代性として語っていいでしょう。

 

話がかなり脇道に逸れたんですが、ジャニーズにしてもたぶん世の中の大多数の人からすれば、グループを組んだ時点でデビューを決定付けられているイメージだと思われてる節があります。最近でこそ、ジュニア時代の苦労なんかが語られることが多いですが、実際の競争率とか、グループの大多数がデビューせずに解体してる現実はジャニオタしか知らないと思います。

 

人気メンバーは他に取られたり、学業専念という魔法の言葉で退所したり(大体出た後よそで芸能活動してますが、学業はどうした、学業は)、大半は一期メンバーと二期メンバー、みたいな位置づけでやってるんですよね。

時々語られる中でもSMAPに太一くんがいた、とかTOKIOの初期ボーカルの小島啓くんとか、キンキに神原くんという三人目がいたとか、色んな話がありますが、紙一重なんですよね。デビューできるかどうかって。K.K.Kityなんかもそうですが、小山くん加藤くん草野くんがNEWSでデビューしたのにityの三人はチャンスが巡ってこなかったり。

 

そもそもが、ジャニーズでメジャーデビューするにはそこそこの人気じゃ無理ですよね。ジャニーさんが主導でデビューさせるバレーユニット系は歌かダンスか両方の実力、ないしスペオキになれる顔面が求められますし、下積みを経てデビューする人たちはデビュー前でソロコンを松竹座とかで一日何公演もできるぐらいの人気が無いと無理です。それこそ人気絶頂でデビューする、ぐらいの勢いが求められます。

 

キスマイやえびなんかはちょうど私と同い年くらいの世代なんですが、同期メンバーがYOU&J若手あたりなのにデビューまでにかなりの時間を費やし、相当悔しい想いをしたということがデビュー後の記事や本などを読むと伝わってきます(『裸の時代』はかなりグッと来ました。)。

 

 YOU&Jについては言いたいことがたくさんありすぎて気づいたら概論だけで6,500文字も打ってしまいました。各グループについてのことも書きたいことがあるのですが今回はこの辺で。