サンシャイン感想その②(第8話まで)
前回の記事であまりにもまじめにやりすぎたのでキャラを中心にサンシャインの話をします。
誤解を恐れずに言わせていただきたいのですが、サンシャインに最初はあんまり興味が持てなくて、アニメも見る気はなかったんです。
私にとってのラブライブはμ'sだし、μ'sだけでラブライブの世界観は美しく終われるんだからもういいじゃないかと。μ'sが終わったんならもう必要ないじゃないか、と。
アイマスの時にも思ったんですけど、無理してコンテンツを延命すると世界観なりなんなりが確実に歪むわけですよ。アイマスは「輝きの向こう側へ」で一つの区切りをつけたわけですが、ラブライブは劇場版で終わりじゃだめなのか、と。新しい物語を受け入れ難い気持ちがありました。
そういうスタンスで、スクフェスでサンシャインの子たちが出てきても、シングルが出てもあまり興味を持てずにいたんですが、こないだたまたまhuluに配信されているのを見つけて。
一応ラブライブを追ってきた身として、このコンテンツの行く末を見守る必要があるのかな、という気持ちに駆られて。見てみたんですね。
そしたら、なんだよ、面白いじゃん、と。
舞台を東京から地方へ移した必要性がきちんと織り込まれてるじゃん、と。
まぁでも最初の辺りは、キャラ付けがアクが強くてちょっとなぁ…とか()無印の話をなぞりすぎてオリジナリティがなぁ…とか思ってたんですけど、だんだんとこの子たちかわいいじゃん。μ's以前、以後でスクールアイドルがどう変わってきたか、という事も踏まえて面白いじゃん。となっていったわけですよ。
一話ごとにどんどん楽しみになっていく自分がいたわけです。
最初にフックがあったなぁと思ったのが第三話のファーストライブ回でした。
前回の記事でも書きましたが、「大人の存在」を意図的に対立軸に持ってきていた無印との対比で、きちんと年長者へ協力を仰ぐ、というステップを踏ませたのが面白いと思ったんですね。
無印では話に関わってくるのはビッグバード理事長くらいで、近年揶揄される「大人不在の物語」を作ってきたけれども、地域社会を描く本作では一貫して親・姉妹・地域の人を出しています。地域社会では依然として「子供」とそれを見守る「大人」の構造が残っているということが描かれているのが、丁寧だなぁ、と思うんですね。
あと、千歌の姉ちゃんが自分の従業員を連れてこれる、というのも面白いなぁ、と思ったんですよね。休みの日に妹のライブあるから来てよ、で来てくれる限界が沼津市、人口十数万人の都市の外れのほう、くらいの規模だと思うんですよね。
田舎特有のことですが、全く別の場所で知り合った人が実は親兄弟とつながってる、なんてことはザラで、数人介せば誰とでも繋がれる、コミュニティの広がりの限界があるのです。だからこそ浦の星女学院のスクールアイドルを応援する、という土着性をバックグラウンドにしたスクールアイドルに説得力があると思うし、休日にやる事や行くところの選択肢の幅という観点においても暇だし行ってみようか、が成り立つと思うんです。
あれがμ’sだったらこうはいかない。アキバにいる人たちなんて東京出身の人すらそう多くないでしょうし、何人知り合いを辿ったところで誰も見つけることはできないでしょう。働く場所、通う学校、遊びに行く場所の選択肢が多すぎるんですね。
そして迎えたファーストライブ、「ダイスキだったらダイジョウブ!」で曜ちゃんから歌いだしっていうのが、シビレましたね。千歌ちゃんじゃなく、曜ちゃんからなんだ!っていう。
だからやっぱり陽ちゃんはμ’sでいうことりちゃんの役割なんだなって。歌いだしを担当する切り込み隊長は、やっぱり「主人公のために」という旗印を掲げれば何でもできる肝の据わった正妻の親友ポジなんだなって。東京回の時もかなり現実を見据えてましたよね。水泳部の活動はダイジョウブなんでしょうか。心配です。
で、4話の花丸ルビィ回で完全にやられちゃいました。
詳しいことは他で散々言われていることだと思うので割愛するのですが、友情の在り方を丹念に描く回でした。無印のりんぱな回で凛ちゃんがかよちんの背中を押したのと同じような筋ではあるのですが、
「これで丸の話はおしまい。夢は叶ったから、本の世界に戻るの」
というセリフの持つ意味は重いよ?これって、CCさくらの知世ちゃん並の愛を含んだ台詞ですよ。
「彼女の幸せを願って、自己実現させるためなら、自分のものじゃなくなってもOK」っていう覚悟を、誰にも言わず心に秘めて送り出したわけですから。まさに秘すれば花、花丸、なるほど、というわけですね。世阿弥もびっくりですよ。
花丸さんの、「一番の友達だからこそ背中を押そう、あの強そうな生徒会長へも話を通そう」っていう男気。穏やかだけど芯は強い、そんな花丸さんの魅力がとても詰まった回でしたね。
一方のルビィちゃんは天真爛漫で一生懸命な感じですが、花丸ちゃんが思っているのと同じくらいに、ルビィちゃんサイドも花丸ちゃんのことを想っている、という鉄壁のカップリングを披露。カプ厨は悶死しました。
そんで一年生のもう一人、ヨハネ回の第5話も素晴らしかったですね。
AURAや中二病でも恋がしたい!以降脚光を浴びている中二病属性(一昔前は邪気眼って言ってたりしましたっけね)と訣別しようとする善子ちゃん。
まぁあの素行を披露しててクラスでいじめられる気配すらない辺り、浦の星の方々はAURAと比べるまでもなく優しいんですが。
堕天しない?と堕天使Night?のダブルミーニングや天界からのドロップアウター!やらのフレーズも面白かったし、普通だった善子ちゃんが自分が平凡な存在だとわかって天使→堕天使へ自らを貶めて闇落ちした、という青少年にありがちな過剰なキャラ付けをしてきたこと、それとどう向き合っていくのか、という点でも興味深い回だった。
最後に、堕天使コスをした5人がやってきて、
善子「いいの!変な事いうわよ」
曜「いいよ。」
善子「時々儀式とかするかもよ!」
梨子「そのぐらい我慢するわ。」
善子「リトルデーモンになれとか言うかも!」
千歌「それは・・・でも嫌だったらやだっていう!」
と、二年生の先輩たちが畳みかけるようにヨハネを肯定する展開には心を打たれました。夕焼けと夕闇の対比が無印の頃にもありましたが、視覚面で非常に効果的です。
ヨハネちゃんに必要だったのは、自分と、自分のやりたい事を世間から肯定してもらうことだったんです。
結果的にダイヤさんに大目玉を食らい、順位も降下して、世間から評価はされなかったのですけれど、Aqoursの5人だけはあなたの事、あなたのやりたい事を肯定するよ、という姿勢。素晴らしいですよね。
先ほどの台詞の後に黒い羽を手渡すくだりはまさに無印二期のEDですよね。無印劇場版の最後にも羽のシーンはありましたが、μ'sからAqoursに渡されたバトンのようにも思います。
次に第6話、PV回は地域創生的な意味合いの強い回でしたね。
海開きをするときに提灯を持ってゴミ拾いをする地元の人たちに着想を得た「夢で夜空を照らしたい」には六人の住む共同体の伝統が色濃く反映されていました。提灯が空に飛んでいき、Aqoursの文字を出来るのはまんま「もぎゅっとLoveで接近中」のPVのオマージュですよね。
出だしがルビィ→花丸→善子で繋がれていくのも4話5話でやってきた一年生の話をなぞっていく感じでいいですよね。この回はキャラがどうとかでなく、ストーリーとしてとても好きです。飛んでった提灯どうすんだよ、とか思いましたが。
そのあとは第7話~第8話の二話を使って東京回でしたが、ここでは東京との格差を見せつけます。
まぁこの辺はμ'sがファーストライブで挫折したのを、中盤に持ち越して大都会の規模とかレベルとか人口とかと対比して竦ませる、という形で都会に出てきた田舎者の心情をトレースしている感じでいいですね。
私も田舎から初めて都会に出たときに、自分の住んでいた町がいかにちっぽけだったかと思い知ったものです。地元の一年に一回のお祭りくらいの人が常にいるんですからね。
結成して多く見積もっても数か月のグループを一流どころの中に呼ぶ委員会も、マジギレするセイントスノーもどうかと思うんですけど、この回の主旨は競技スクールアイドルのレベルの質がいかに向上したかを説明することにあったのです。μ's・A-RISE時代の功罪ですよね。中途半端なやつらは来るな、バカにしてんのか、みたいな空気になってるわけですもんね。
セイントスノーのゴリッゴリのミュージックに「弱さ」を嫌う歌詞、「セルフコントロール」というタイトルからも、この世界でのアイドル像はアライズ系のカッコイイ系が主流のようです。もちろん現実で男性をメイン層にしなければならない主人公ユニットのライバルですので対照的な感じだと必然そうなってくるんでしょうけどね。
ただ、前作からも折に触れて出てくるように、ラブライブ世界では「アイドル」のターゲット層は女性、とりわけ女子学生であり、我々の世界のアイドルとは少しニュアンスが違っているようにも感じられます。女子の憧れがスクールアイドルであって、オタクの慰み者ではないんですよね。
セイントスノーの十傑集みたいな体技とか見てるとスクールアイドルの世界のプロアイドルはどんな人たちなんだろう…と某プリンスオブテニスのようないらぬ詮索をしてしまうんですが、一位はどんな方々なんでしょうね。ていうかセイントスノーのせいらとりあさんは矢澤さんの妹にしか見えなかったんですが今後関わってくるんでしょうかね。
8話で東京から敗残兵のごとく帰ってきて落ち込む6人に優しいダイヤさんとか、千歌ちゃんがくやしい、と嗚咽を漏らすシーンは泣けますよねぇ。
あと、得票が「ゼロ」であったことを強調しておいて、
「だから私続けるよ、スクールアイドル。だってまだゼロなんだもん!」
というセリフで(現実世界の)デビューシングルのカップリングである「Step! Zero to ONE」をなぞってくるのも憎いですよね。
あと、
「みんな千歌ちゃんのためにスクールアイドルやってるわけじゃないわよ。自分で決めたの!」
という台詞もいいですね。
μ'sの物語で穂乃果が本音を言えずに「最低です!」に繋がっていたことを考えると、今作では二年生組が比較的早い段階から本音でぶつかり合う描写があるのも対照的です。
長くなったので今日はこの辺で。第9話見なきゃ。